朝日新聞採用担当部長 大西史晃先生が教える「記者になる!?」講座

 2022年10 月 27 日(木)、朝日新聞人事部新卒採用担当部長の大西史晃先生の講演が行われた。 朝日の採用部長がゼミで行う講演会は、今回で 5 回目となる。今回のテーマは、第 1 部 「記者の仕事withコロナ・afterコロナの時代の記者像 データの世紀におけるジャーナリズム」、第 2 部 「新卒採用担当部長の就活アドバイス」である。

 講演会の始まりは、5 年前。「これからは地方国立大学の時代だ。特に東京にも近く、中央と地方、両方の視線を持てる『茨城大の時代』だ」。新学期、ゼミの冒頭で村上先生が語る言葉だ。「21 世紀、日本の問題は地方から始まり、それを克服するムーブも地方から生まれる」。さらに、「地域の問題を深く掘ると、その先、全宇宙に通じる」ともいう。新聞、テレビ、出版などマスコミの世界も長く、東京の有名大学出身者が多かった。しかし、これからはポテンシャルの高い、地方国立大の学生が求められる。朝日新聞の人事部採用担当とのお付き合いは、まさにこの言葉を双方が意気に感じたことから始まった。

 2019 年 7 月、朝日新聞広報局(当時)の西川祥一記者が、ゼミで講演を行った。テーマは「朝日新聞に入る方法(仮)」。最初は「新聞記者の仕事、醍醐味」のようなテーマを想定し、講演をお願いした。西川さんと先生は、飲み友達。飲みながら、講演内容を打ち合わせ。「いっそ、朝日の記者になるという視点で、記者の仕事を話して欲しい」と、頼んだ。その時に、「マスコミも地方国立大が必要だ」と持論も話したという。それに西川さんも共感、人事の採用チームにも相談し、準備をした。

「面白い。ぜひ一人でも多く、朝日を受けてくれるように言ってください。でも、タイトルはストレート過ぎるので一考を」と、当時の採用担当部長。

 講演は、ぶっちゃけ、収入、暮らしや社員のキャリアプラン、業界、記者の未来から、求められる人物、面接でのアピール、ES の書き方など多岐に渡り、刺激的な内容となった。西川さんの話を聞き、「記者になる!」と決心した一人が、共同通信の記者になった岸本靖子(8期)だ。「講演会の後の懇親会で、まずインターンシップを受けろとアドバイスされた」西川さんの報告、ゼミ生の感想文を読んだ諸麦美紀採用担当部長(当時)から、村上先生へランチのお誘いメール。当時、諸麦部長も多彩な記者を育てるための方法として、地方国立大学に魅力を感じていた。

 手掛かりとして、地方の総局支局と交流のある大学をリサーチ。水戸総局と交流が深い、村上ゼミが浮かんだ。新人記者による就活のシンポジウムや記者の講演、ゼミコンパや卒論、研究の相談、選挙や裁判の順番取りのバイトなど、様々な付き合いがあった。2018 年、18歳選挙の導入の際は、村上先生の 1 年生の授業を半年間、取材し連載もした。

 またゼミ生の多くがマスコミに進む。で、先生の持論 が「地方国立大の時代」。 そこで話が弾み、採用担当がゼミに来て「記者になる方法(=朝日新聞への入り方)」 をテーマに講演することが決まった。その後、諸麦部長は異動になったが、10 月、木村悦子課長(当時)がゼミで講演。講演会は採用担当部長が変わっても続き、今回で5回目を数える。

 大西史晃部長は 1998 年、朝日新聞社入社。鹿児島総局、 福岡本部報道センターなどを経て2005年に東京本社社会部。教育問題や調査報道を担当する。その後、静岡総局デスク、2019 年から東京本社スポーツ部。デスクとしてサッカーを担当した。2021 年6月から人事部採用担当部長に着任している。村上ゼミでの講演は、2年目。昨年も、コロナ禍の合間に駆けつけて頂き、ゼミ生を励ました。昨年のテーマは、第1部「デジタル時代の記者像」第2部「記者になる方法」だった。



第 1 部 「withコロナ・afterコロナの時代の記者像 データの世紀におけるジャーナリズム」

 デジタル化が進んでいる今、求められる記者像も新しくなっている。取材して文章を書くだけでなく、データ分析やプログラミングの力が重視されるようになった。2022年、大規模なデータを分析し、新たな事実を突き止める「データジャーナリズム」が盛んになった。その例として挙げられたのは、「東京23区にも『限界集落』15カ所 高齢化する地域、誰が支える?」の記事。細かな国勢調査分析と現地の取材によって、東京の中心部にさえ高齢化が迫る事実を明らかにした。

 また、朝日新聞が公開している『プレミアムA みえない交差点』も、「データジャーナリズム」だ。警察庁のオープンデータを材料にデータを分析、記者自らプログラムを作成し、全国の交通事故と危険な交差点を明らかにした。これにより、事故が多いにも関わらず、「危険」とされていなかった事故多発地域を発見することになった。

「データジャーナリズムはデータ+現地の取材で、見えていなかった課題を明らかにしている」と、大西さんは言う。デジタル化は、AI技術の発展も促している。朝日新聞では、「おーとりぃ」というAI戦評記者が誕生。野球のスコアブックを読み込んで分析、瞬時に、記事を作成する。大西さんは、このような小さな記事をAIに任せることで、大きな記事との差別化を図っていると述べた。 

 最後に、「これから新聞はジャーナリズムにデータ分析やプログラミングを取り入れる」と、まとめた。

第 2 部 「新卒採用担当部長の就活アドバイス」

 「やりたいことが明確にあり、そこに向かって突き進める人」は強い。記者を志す人は、自分の個性や良さをアピールするのがよい」と、アドバイスをもらった。さらに、ES では、PDCA(Plan→Do→Check→Act)を意識して、CAまで書くことで、「本人の取り組み、気づきと向上する心が伝わる」。「あれをやった」ではなく、その後の反省と行動が重要なのだ。

 また、書き出しに工夫があるもの、短い文でテンポよくまとめられたものは、「正直、引き込まれる」という。 この2点に気を付けることで、ESにおいて、他の学生との差別化を図ることができる。課題として出される論文と作文で取り組み方が異なる。論文では【自分の考え】を書くこと、作文では自由に【筆者の想い】を書くことが大切だ。

 いずれにしても、経験から結果を導き出す人が求められている。面接はとにかく「慣れ」。面接の緊張感に慣れるために、仲間と自主練習をするのがお薦めだ。講演後の質疑応答では、人事部採用担当部長にしか聞くことができないような攻めた質問が殺到、それにも答えていただいた。

―― ESは最後まで読んでいるのですか。(照沼志帆 4年)

大西)(苦笑)最後まで読んではいるが、1枚1枚のスピードはとても速い。

―― 他のメディアとの交流はどのように行っているのですか。(赤平春菜 4年)

大西)新聞でも動画は重要なものであるため、テレビから学ぶことは多い。人材の交流も行っており、お互いにアドバイスし合っている。


―― ゼミ生の感想

4年( 10期)赤平春菜)今回の講演会では、記者職の魅力ややりがいだけでなく、社会人としての仕事に対する向き合い方までも、大西さんから学ぶことができた。私も、数年後に「この仕事をしていてよかった」と、胸を張れる自分でいたい。そのためには、何事にも興味関心を持ち続け、相手とのコミュニケーションに全力をかけることを意識しようと思う。

3年 (11期)松尾実咲)「こんなに面白い仕事はない」。最後に、大西さんが記者の仕事をそう語っていた姿が、鮮明に記憶に残っている。私も、自分の仕事に対して誇りを持てるような社会人でありたい。置かれた場所で花を咲かせることは大事だ。だが、まずは今、なりたい私になれるよう、今回の講演会で得た学びを胸に、日々のインプットや就活に取り組んでいきたい。

2年(12期)藤岡美羽) 「新聞」と聞いて、勝手に堅苦しいイメージを抱いていたが、時代に合わせた様々な取り組みがあることを知った。多様化していく情報発信に、自ら対応していかなければならない。そして、与えられたニュースに基づいて、自分の考えを発展させていく必要がある。今回の講義を機に、ニュースに対する姿勢を改めたいと思う。

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